労働相談Q&A

社会保険労務士が働く人と雇用する側の労働関係の法令について分かりやすく解説します。

  • Vol.27 働きながら不妊治療を続けたい

    質問

    現在、働きながら不妊治療を続けています。
    通院のために、仕事を休むことも多く、職場の上司や同僚に気を使います。上司は理解を示していましたが、期間が長くなると、同僚からの協力が得にくくなっているように感じます。
    不妊治療で利用できる行政の支援策や会社の取り組みなどについて教えてください。

    ポイント

    不妊治療支援のポイント
    1. 国の方針で不妊治療も保険適用されます。(令和4年4月から)
    2. 厚生労働省で「不妊治療マニュアル」「不妊治療ハンドブック」を発行しています。
    3. 不妊治療の職場環境を整備する企業に「不妊治療両立支援コースの助成金」が利用できます。

    解説

    仕事をしながら不妊治療を続ける多くの人は、両立できずに仕事を辞めたり、もしくは不妊治療をやめた、雇用形態を変えた等、途中で断念する人も少なくありません。
    理由として「精神面・体力面で負担が大きい」、「通院のために職場を休むことが多い」、「経済的負担が大きい」となっています。
    相談のように不妊治療は、通院時間や費用とともに職場の協力が必要になります。

    1. 国の支援策としての、①妻の年齢が43歳未満であること。②1回30万円 ③1子ごとに6回まで(妻が40歳以上43歳未満は3回まで)が、令和4年4月から保険適用となりました。

    2. 事業所への支援としては、両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)や働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)があります。企業は「働きやすい職場づくり」によって不妊治療者の支援を行っています。例として、不妊治療のための半日年休や時間年休の導入、テレワーク制度、長期休職制度、不妊治療で退職した社員の再雇用制度などあります。また、職場への協力依頼として、医師から事業主へ「不妊治療カード」を発行してもらうこともできます。
    このような支援策を利用するためには、職場の理解と同僚の協力が必要です。あわせて企業と労働者が協力して、制度を利用しやすい風土づくりも重要です。

    「不妊治療専門相談センター」(県の看護協会内)への相談もお勧めです。一人で悩まずに、支援策を活用しながら会社への協力依頼も行ってみましょう。

  • Vol.26 産後パパ育休の創設について

    質問

    今年の4月と10月に育児休業の制度が変わって、男性も育児休業が取得しやすくなるって聞いたのですが、それはどんな制度ですか?
    また、その制度を利用して休んだ時には給付金とかもらえるのですか?

    ポイント

    1. 「産後パパ育休(出生時育休制度)」は、対象の期間は子の出生後8週間以内で4週間まで取得可能な制度です。しかも、1回だけでなく分割して2回の取得も可能で、労使協定を締結していれば休業中に就業する事も可能な便利な制度です。

    2. 産後パパ育休を取得した場合には、出生時育児休業給付金が受けられるので、無給の場合と違って仕事と育児の両立がしやすい制度となっております。

    3. 男性の育児休業取得率は少しずつ増えてきましたが、まだ13%代と女性の育児休業取得率に比べてとても低く、日本は遅れていると言われています。その改善のためにも育児・介護休業法改正の一環として、今年の10月に産後パパ育休制度が創設されて、男性も仕事と育児を両立できるようにした制度が創設されました。

    解説

    1. 産後パパ育休の「育児休業給付金」の支給要件としては、休業開始前2年間に、賃金支払い基礎日数が11日以上(ない場合は就業時間数が80時間以上)ある月が12カ月以上あること。
    また、休業期間中の就業日数が、最大10日若しくは時間数が80時間以下であること。

    2. 労使協定を締結している場合に限りますが、休業中に勤務先の仕事ができます。
    ただし、就業可能時間や仕事内容は労働者が合意した内容に限り日数等は上限があります。

    3. 月の末日が育児休業期間中である場合若しくは同一月内で14日以上の育児休業を取得(開始・終了)した場合には月給にかかる厚生年金保険料と健康保険料が免除されます。

    ❀今回の改正を利用して男女で協力して育児に参加しましょう。

  • Vol.25 コロナ関連の休暇・休業について

    質問

    新型コロナについて、職場でも、コロナ感染した、家族に感染者が出た、濃厚接触者として疑いがある等で社員が休業することがあります。
    体調不良で休むことはしようがないと思いますが、休んだ場合の賃金はどうなるのでしょうか。法律で定めがあるのでしょうか。

    ポイント

    1. コロナ関連休業は一般的に、
    ①業務に起因する場合は労災保険適用、
    ②個人的な傷病の休業は健康保険適用、
    ③自己都合で休む場合は、有給休暇または会社の規則に基づき病気休暇や休職制度を利用します。
    ①②は法律の定めがあります。
    2. 今回のように新型コロナで休む場合は、各会社でルールを決めていることがありますので、下記の事例を参考に自社の規則などを確認してください。

    解説

    1.ワクチン接種の休暇
    ・ワクチン接種日1回目を特別有給休暇か自己休暇で取得させています。
    ・ワクチン接種2回目の接種後、副反応が出た場合は、〇日間を特別休暇とする。
    期間は政府が定める期間。
    注意点としてワクチン接種は強制したり、接種しない社員に対して差別的取り扱いは禁止されています。

    2. PCR検査について
    ・得意先訪問など、業務の必要性で会社が検査を命令した場合、費用は会社負担。
    ・本人希望の場合は、自己負担としています。

    3. 感染者、濃厚接触者について
    ・感染者が出た場合、拡大を防ぐため社内消毒や社員の健康状況確認を優先します。
    ・業務上で感染し休業した場合…労働災害保険を申請します。
    ・自己都合で感染し休業した場合…傷病手当や有給休暇を利用します。
    ・濃厚接触者で自宅待機の場合…会社命令の出勤停止は、休業手当支給または自己の休暇を利用します。

    その他、感染拡大防止のために、お客様対応のルール化、日々の社員の健康チェックの実施も大切です。また、業務に支障をきたさないように、在宅勤務や時差出勤、交代勤務等を実施しています。
    法令の定めはなくても、経営者も社員も協力してコロナ感染の拡大防止に取り組みましょう。
    ※新型コロナウイルス感染症に関する最新情報はご自身でもご確認ください。

  • Vol.24 介護休暇について

    質問

    最近職場で、介護休暇を利用したいと申し出た社員がいました。
    2021年1月から、介護休暇は時間単位でとれるということも耳にしましたので、介護休暇について教えて下さい。

    ポイント

    1. 介護休暇とは、家族が要介護状態であることが前提で有給休暇以外に取得できる休暇です。
    2. 介護休暇を利用できるのは、雇用期間が6か月以上の全ての従業員です。
    3. 介護休暇の日数は、対象家族が1名の場合は1年度につき5日、対象家族が2名以上の場合は10日までです。時間単位で取得することもできます。
    4. 介護休暇中の賃金の有給か無給かは、各社の規程で定めます。(法律の定めはありません)

    解説

    「介護休暇」とは、社員が要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある家族の介護や世話をするための休暇で、93日の介護休業とは別の休暇です。

    介護休暇を利用できる社員の要件は、次の通りです。
    1. 家族が2週間以上の要介護状態にあること
    2. 対象家族は、父母、配偶者、子(含む養子)、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫。
    3. 雇用期間が6か月以上あること。パート、アルバイト社員でも利用できます。(日雇い労働者、労働時間が週2日以下は労使協定で取得できないこともあります。)
    4. 取得できる日数は、有給休暇以外に対象家族が1名の場合1年度で5日、2名以上は10日。時間単位で取ることも可能です。
    5. 賃金については、有給か無給かは会社の規程によりますので、就業規則で確認しましょう。介護休暇には、給付金はありません。
    介護休暇は、介護をしながら働き続けられるように制定された制度です。通院の付添いや介護サービスの手続きや打合せなど、介護で休暇が必要になった場合に利用できます。

    事業主は介護休暇の申し出を断ることはできませんので、自社の制度について事前に確認しておくことも必要です。

  • Vol.23 新型コロナに関する休業手当金について(令和3年9月版)

    質問

    令和2年3月頃から新型コロナウィルス感染症の影響で、勤務日数が減っています。
    給与は一部支払われていますが、上司は「給与全額ではないが、休業手当金として支払っている」とのことです。休業手当金というのは、支払い基準が法律で定められているのでしょうか。また、休業する日数に上限があるのでしょうか。
    マスコミ報道で、雇用調整助成金は会社が申請すれば会社に支給されると聞いています。
    直接、従業員に支払う助成金はないのでしょうか。

    ポイント

    1. 休業手当金は、使用者の責任による事由で休業させた場合、休業期間中の従業員に、平均賃金の60%以上の手当を支払わなければならないものです。(労基法第26条)
    この際の休業とは、働く日(労働日)に「働く意思と能力があるが労働することができない状態」をいいます。本来の労働する必要のない休日や病休、自己都合で取得する有給休暇などは該当しません。

    2. 休業手当は、平均賃金の100分の60以上を支払わなければいけません。100分の60以上であれば上限はありませんし、休業日数についても上限はありません。

    3. 雇用調整助成金は、従業員を休業させて、休業手当を支払った場合に事業主が申請するものです。また、休業した従業員に休業手当の支払いが困難な場合には、従業員が直接申請できる「休業支援金・給付金」があります。

    解説

    1. 今回の新型コロナ感染症の拡大感染防止のため、多くの企業で活動を制限し、従業員の出社日数や勤務時間数を減らしたり、在宅勤務などを実施しています。この休業が使用者責任なのか議論はありますが、国は従業員の雇用を維持する企業に雇用調整助成金で支援することにし、使用者都合として休業手当金を支払うことを求めています。仕事ができないための休業なので、テレワークや、病気休暇や自己都合で休む場合は対象とはなりません。

    2. 休業手当金は平均賃金の100分の60以上を支払わなければいけません。(基本給ではありません)休業手当の支給割合は60%以上であれば使用者が決めることができます。

    3. 休業手当の計算は、1日当たりの平均賃金✕60%以上✕休業した日数で計算します。
    また、短時間等の時間休業であった場合は、時給✕60%以上✕休業した時間、を支給しなければいけません。

    今回の新型コロナ感染症による影響で、企業も従業員も働く環境が大きく変化しています。国も色々な支援策を設けています。支援策の申請には期限もありますので、相談センターや関係コールセンター等に確認して、早めの利用で厳しい環境を乗り越えましょう。

  • Vol.22 身元保証人について

    質問

    求職活動をしていて、正社員の内定通知を受け取りました。提出書類がいくつか書かれていますが、その中に「身元保証人を2人」必要と書いてあります。1人は親族で、もう1人は親族以外となっています。この「身元保証書」は必ず出さなければいけませんか。
    もし親族以外で探せない場合、採用されないのでしょうか。
    また、身元保証人はいつまでの保証になるのでしょうか。

    ポイント

    1. 身元保証書について労働基準法に規定はありません。提出を拒否することもできますが、身元保証書を提出しない場合、企業側も採用を拒否する可能性があります。
    2. 身元保証人の期間は、期間の定めがない場合は3年間、定めがあっても最長5年間とされています。会社によっては更新することもあります。
    3. 身元保証人が探せない場合は、会社に相談してみましょう。

    解説

    身元保証とは、
    ①採用する社員がきちんと仕事に従事できる人という身元を証明する目的
    ②社員が企業に損害を与えた場合(例えば、会社のお金を無断で私的流用した、会社の顧客情報を流出させて会社に損害を与えた、行方不明になったなど)
    本人に十分な賠償能力がない時、本人と保証人が連帯して賠償責任を約束するために必要とされています。
    このような事態が起きなければ、身元保証人に迷惑をかけることはありません。
    身元保証人を求めるかどうかはそれぞれの企業で任意に定めることになっています。
    身元保証人の期間は、期間の定めがない場合は3年、最長でも5年とされていますが、会社によっては更新してさらに5年延長することもあります。

    身元保証人にふさわしい人物の判断は、会社に一任されており、1人、2人などその条件についても企業ごとで異なっています。
    一般的には「安定した収入があること」が原則で、友人・知人でもよいのです。
    これまでは身元保証人の賠償額を決めずに身元保証契約ができましたが、2020年4月からは、賠償額の上限を決めなければいけません。(身元保証に関する法律)
    不幸にも損害賠償するような問題がおきても保証人が全ての責任を取る必要はなく、保証人側には契約解除といった自分を守る権利も残されているので、お願いするために覚えておくといいでしょう。
    身元保証人が探せない場合、企業に相談することをお勧めします。ぜひ採用したい人物であれば、よい助言がもらえるでしょう。

  • Vol.21 時間外勤務した場合の賃金について

    質問

    1日6時間の週5日の短時間勤務をしています。月に2~3回6時間を超えて働くことがありますが、それは残業として給与明細に記載されていないようです。
    先日、会社の総務担当に質問しましたが、総務担当者は、「基本給の中に残業代も含まれている」と説明がありました。
    よく理解できないので残業代についての計算方法について、教えていただけませんか。

    ポイント

    1. 所定の労働時間を超えて働いた場合、(相談者の場合は所定時間は6時間)その超えた時間について賃金を支払う必要があり、労働基準法第37条に定められています。

    2. 法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働いた場合、その超えた時間については割増賃金を支払わなければいけません。
    ①労働時間の延長(法定労働時間を超えた場合)は 2割5分以上
    ②深夜 (22時~5時まで)労働の場合は2割5分以上
    ③休日労働(法定休日)の場合は3割5分以上の割増賃金を支払わなければいけません

    3. 残業代が基本給に含まれている場合、残業時間と金額を明確にしなければいけない。

    解説

    賃金は、業務で働いた時間分を支払わなければいけません。
    所定時間を超えて働いた場合の計算については、法令で定めがありますので、会社任せにせずに働く者の基礎知識として理解しておきましょう。
    例えば6時間勤務の人が6時間を超えて働いた場合、時間外勤務手当は8時間 (法定労働時間といいます) までは所定の賃金で計算します。
    法定労働時間の8時間を超えた時間は2割5分以上の割増賃金で計算します。また午後10時から午前5時までを深夜労働として、さらに2割5分以上の割増で計算します。休日は法定休日(週1回)に勤務した場合3割5分以上の割増計算をしなければいけません。
    時間外勤務をする場合は、それが業務命令であれば問題はありませんが、自己都合で居残りした場合は時間外と認められないこともありますので、上司の指示であることの確認をしましょう。とくに時間外勤務は毎月の仕事によって変動することがありますので、自分の出勤簿やタイムカードで勤務した時間を確認するとよいでしょう。
    総務担当が「基本給に入っている」と説明していますが、時間外の賃金は何時間分で金額はいくらなのか確認する必要があります。

  • Vol.20 契約社員から正社員へ変更したときの有給休暇について

    質問

    これまで2年間、週3日フルタイムの契約社員で働いていました。有給休暇日数は年間6日でした。今回途中で正社員採用になりましたが、正社員になると有給休暇日数は増えるのでしょうか。入社日は4月1日です。またいつから変更になりますか。それと有給休暇日数は毎年増えていくのでしょうか。

    ポイント

    1. 正社員に登用されると、有給休暇日数は週の労働日数に応じて変更になります。
    2. 変更される時期は、正社員になった直後の基準日(一般的には入社日)からです。
    3. 有給休暇は勤続年数に応じて、毎年増えていきますが、上限は20日になります。

    解説

    労基法では、入社後6か月継続勤務し、労働すべき日の8割以上出勤していれば、勤務年数に応じた有給休暇が付与されます。
    具体的には、パート期間の5日の有給休暇は、正社員に採用された後も有効です。
    勤務時間が週30時間未満の場合、週の勤務日数に応じた有給休暇が付与されていました(比例付与といいます)。相談者の場合、週3日2年で、6日が付与されていました。

    1. 今回正社員に採用されたことで、下記の有給休暇が与えられます。
    ◆年次有給休暇日数(30時間以上、週5日勤務)

    勤続年数
    付与日数
    6ヶ月
    10日
    1年6ヶ月
    11日
    2年6ヶ月
    12日
    3年6ヶ月
    14日
    4年6ヶ月
    16日
    4年6ヶ月
    18日
    6年6ヶ月以上
    20日


    2. 正社員になってからの変更時期は、正社員になった直後の基準日(4月1日)からです。すぐに変更されるわけではありません。

    3. 算定期間中の出勤率が8割以上であれば、勤続年数に応じた日数が付与されます。
    出勤率が8割未満になると、翌年は有給休暇は付与されませんから、休むと欠勤になることがあります。
    しかし、その翌年8割以上出勤すると、その勤続年数に応じた有給休暇が与えられますが、上限は20日となっています。

  • Vol.19 就業規則は、だれがどのように作成するのですか

    質問

    職場で働く場合に、労働時間や休憩、時間外労働、休日などについて、上司に確認すると上司から「就業規則で確認して」と言われました。また、同僚が休職したいと申し出たときに「わが社は、就業規則に休職制度はないので、役員と相談して」と言われました。
    そもそも就業規則は誰が作成するのですか、また就業規則に書いてなければ、何もできないのですか。教えて下さい。

    ポイント

    1. 労働者が安心して働ける明るい職場つくりのために労働時間や賃金、人事・服務規律などを定めます。10人以上の労働者の労働条件や待遇の基準をはっきりと定め、常時10人以上の労働者を使用する事業場においては、これを作成しまたは変更する場合に、所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。(労基法第89条)

    2. 就業規則を作成する際には、絶対的記載事項(法で定めた必ず記載すべき事項)と相対的記載事項(会社で任意に定めた事項)があります。(労基法第89条)

    3. 就業規則を作成したら、労働者全員に周知(知らせる)しなければいけません。

    解説

    1. 労働時間や休日、賃金、退職に関することなどは、絶対的記載事項ですので、就業規則を確認することが大切です。

    2. 休職に関することや退職金、懲戒に関することなどは、相対的記載事項ですので、それぞれの会社で定めることができます。自社の就業規則で休職の項目があるか確認して下さい。

    3. 常時10人以上の労働者が働いている場合は、就業規則を作成して、労働者全員に周知しなければいけませんが、周知の方法は色々あります。会社側から説明会を行う、労働者がいつでも見える場所に置いておく、電子媒体等で周知するなどです。

    就業規則に記載がなければ、会社の制度が利用できないというものでもありません。
    例えば、休職の定めがなくても会社の承認により、一定期間の休職を認めることもできます。就業規則は、会社の働き方の原則ですが、その運用はある程度柔軟に行われています。
    就業規則を作成し、又は変更する場合の所轄労働基準監督署長への届出については、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、過半数で組織する労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者の意見書を提出します。
    社内で就業規則の学習会を行って会社の服務規律を理解するのも良い機会です。

  • Vol.18 新型コロナに関する休業手当金について(令和2年9月版)

    質問

    令和2年3月頃から新型コロナウィルス感染症の影響で、勤務日数が減っています。給与は一部支払われていますが、上司は「給与全額ではないが、休業手当金として支払っている」とのことです。
    休業手当金というのは、支払い基準が法律で定められているのでしょうか。
    また、休業する日数に上限があるのでしょうか。
    マスコミ報道で、雇用調整助成金は会社が申請すれば会社に支給されると聞いています。
    直接、従業員に支払う助成金はないのでしょうか。

    ポイント

    1. 休業手当金は、使用者の責任による事由で休業させた場合、休業期間中の従業員に、平均賃金の60%以上の手当を支払わなければならないものです。(労基法第26条)
    この際の休業とは、働く日(労働日)に「働く意思と能力があるが労働することができない状態」をいいます。本来の労働する必要のない休日や病休、自己都合で取得する有給休暇などは該当しません。

    2. 休業手当は、平均賃金の100分の60以上を支払わなければいけません。100分の60以上であれば上限はありませんし、休業日数についても上限はありません。

    3. 雇用調整助成金は使用者が申請し、休業手当を支払った使用者に支給される助成金です。現在、休業した従業員に支払う支援制度はありませんが、現在国会でも直接従業員に支払う支援策も検討されているようです。今後に期待したいです。

    解説

    1. 今回の新型コロナ感染症の拡大感染防止のため、多くの企業で活動を制限し、従業員の出社日数や勤務時間数を減らしたり、在宅勤務などの導入を実施しています。
    この休業が使用者責任なのか議論はありますが、国は従業員の雇用を維持する企業に雇用調整助成金で支援することにし、使用者都合として休業手当金を支払うことを求めています。仕事ができないための休業なので、テレワークや、病気休暇や自己都合で休む場合は対象とはなりません。

    2. 休業手当金は平均賃金の100分の60以上を支払わなければいけません。(基本給ではありません)休業手当の支給割合は60%以上であれば使用者が決めることができます。

    3. 休業手当の計算は、1日当たりの平均賃金✕60%以上✕休業した日数で計算します。また、短時間等の時間休業であった場合は、時給✕60%以上✕休業した時間、を支給しなければいけません。

    今回の新型コロナ感染症による影響で、企業も従業員も働く環境が大きく変化しています。政府の支援策を利用して厳しい環境を乗り越えましょう。

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